北八ヶ岳方面 二日目 蓼科山

 車中泊初日というのはなかなか熟睡に至ることは無い。流石にある程度の回数を重ねてだいぶ慣れてきたとはいえ、毎回セッティング的に何らかの反省点が残るものだ。だが、初日の睡眠不足解消の為に二日目以降は自然と良く眠れるようになるといった皮肉な結果にもつながる。

 実は車を停める場所が結構重要で、自分の場合はトイレが近いので必然的にトイレの至近距離にある場所が好ましい。だが一番重要なのは”平ら”な所を見つける事なのだ。整備された道の駅の駐車場でもなかなか水平な箇所を見つけるのは難しい。適当に妥協してしまうと、長い夜に微妙な斜度に体をひねりながら悶々とする事になる。頭が下に下がるのは論外だが、左右の僅かな傾きでも人間って案外敏感に感じ取る事が出来るものなのだ。もっとも、そんな理想的な場所にありつけるのはそうはなかなか無い。寝床の下に敷物を入れて角度調整などの涙ぐましい努力が必要になるのだ。ホントはそんなことを気にせず豪快に熟睡できる図太さがあれば良い話なのだが、自分はそこまでの気力は持ち合わせていない(*´Д`)

 前日のスポット予報では朝のうちガスが出て9時くらいから晴れるという予報だった。事実、日の出直後にカーテン越しに周囲を眺めるとガスに覆われていて何も見えない。仕方ないなと、6時出発の予定を少し遅らせるべく小一時間眠りをむさぼった。

 やがて、周囲の車中泊組の動き出す物音や麓から上がってくる車もぼつぼつ増えだしてきた気配。外を見るとなんとガスはすっかり消えて快晴の登山日和になっているではないか。慌てて片付けをして朝食のパンに齧りついた。
 おいおい、こんなに晴れるなら歩き出しはどうせ景色もあまりないだろうし、予定通り6時出発にすりゃ良かったかなと自分にぼやきながら慌てて準備して6時40分頃に出発した。

{今回、GPSのログを間違って消してしまった( ;∀;)のでルートマップは無し}

朝のうち曇り空の予報が嬉しく外れた快晴の大河原峠

さぁ、行きますか

 序盤は幾らかきつめの登りもあったが、段々と緩やかとなる。あまり苦労もせず佐久市最高地点を経て蓼科山荘へと向かう渡り廊下のような箇所へ至った。今日の標高差は僅か430m程度。それも終盤の蓼科山荘からは残り170mの急登だが、前半の260mは日差しが遮られた樹林の長い距離で登るのだから楽ちんだ。

 北八ヶ岳も八ヶ岳も火山で出来た山域なのでどこを歩いていても岩のゴロゴロが必ず出てくるようだ。大河原峠からの登りも岩は幾らかあったが、まだこの辺では気になるレベルでは無かった。

地元高原山の矢板市最高地点と一緒で特に眺望も無し

縞枯れの隙間から蓼科山が顔を覗かせる

切れ間の眺望地点より形の良い八ヶ岳がスッキリと見えた

 蓼科山荘へ到着。会津駒ケ岳でも思ったのが、やはりメジャーな山は小屋そのものの存在だ。この後山頂の肩にも山頂小屋があるのだが、営業的に見てどうなのだろうかと要らぬ心配をしてしまう。コロナで人の出が少ない昨今はともかく、本来はこの程度の登山者の数で収まっていないのかもしれない。

蓼科山荘から山頂を目指す

 蓼科山荘の広場の隅の木陰に身を寄せ、汗を拭ってしばし休憩。山頂までの急登に備えた。
 残り標高の170mは大きな岩の連続する区間で、上のほうに行けば行くほど斜度もきつくなり、歩くのが大変になってくる。救いがあるのは小石が殆ど無いため浮石に乗って転倒などの可能性が低いことだが、それでも気は抜けない。

大きな岩の並ぶ道を登っていく 後半段々斜度がきつくなる カメラはザックにしまった

 キツイ登りも一気に空が拡がるとそこは山頂の肩にある蓼科山頂ヒュッテ。山シャツやグッズなどの販売がこのロケーションでも行われているのが自分のような田舎者ハイカーにとっては目新しい。

山頂直下の蓼科山頂ヒュッテ

 山頂ヒュッテより一投足でいよいよ山頂へ到達だ。
 広々とした火口原に拡がる荒涼とした溶岩。360度の眺望をぐるりと囲む南、中央、北。日本の全てのアルプス。
 東には大河原峠からもよく見えた浅間山。南側には明後日登る予定の北横岳がどっしりと控えており、その先には八ヶ岳の主峰たちが織り成すように連なっている。恐らく今まで登ってきた山の中でベストと言って良いかもしれない眺望に酔い知れる。火口原の周囲を約1/3周もしただろうか。せめて山座同定がもう少し出来ればと残念であった。

そして山頂へ 360度抜けの良い眺望だ

手前は明後日登る予定の北横岳 右下に見える建物はロープウェイの山麓駅

白樺湖と霧ヶ峰 最高地点が車山

中央アルプス 北アルプスとぐるりと丸見え

中央は槍ヶ岳 流石尖がってるなぁ

方位盤 到達した時は密だったので立つのをあきらめた

こちらは恐らく浅間山方面

再び方位盤

さて下山しよう

道標もなんとなくキリっとしている気がする

 蓼科山荘までの岩場の急斜面は下りも要注意だ。時間的に登ってくる人が段々増えてきたので、場所によっては歩きやすいルートを譲り合ったりもするし、勢いあまっての転倒も気にしながらなので要する時間は登りとさほど変わらないかもしれない気がする。おじいちゃんとまだ小さなお孫さんがヘルメットを被って登ってきた。思わず『頑張って』と声をかけた。

 難所通過で一息、蓼科山荘前でまた休憩を取り、今度は天祥寺平へ向けて降下を始めた。
 やがてガレ場になる。浮石に乗る可能性が高いので慎重になるも更に斜度も加わり苦しめられる。
 このルートは基本的に沢沿いに下っていくのだが、場所によっては沢の真ん中を下るところもあり大きな岩の間を縫いながら、岩の頭を渡りながら時折出てくる浮石にも気を付けながらで思いのほか苦戦した。

 よく見ると脇に踏み跡が見え隠れしている。岩を嫌う人達が歩いたのは明白だ。実は大河原峠からの登りでも一部そういう区間があったが、正規登山道以外を歩いて道を広げるのはこういったメジャーな山では如何なものかと歩かずに登ってきた。
 だが、いつまでも果てることのない拷問のようなガレ下りにとうとう屈服して踏み跡を自分も追ってしまった。

ガレ場に苦しめられながら下って振り向いた蓼科山

ここから北横岳に登ることも出来るが、お楽しみは後日へ

 ようやく天祥寺平へ到着。本来ならここから亀甲池、双子池と巡り最後に双子山を乗り越して大河原峠へというプランだったが、スパルタンなガレ下りに精神的に参ってしまったのと強い日差しに負けてルート短縮を決定。僅かな木陰を探して大休止だ。気温はさほど高くないので日陰にじっとしている限りであれば案外過ごしやすい。風が少しでもあれば更に快適。だがそれも一歩太陽の日差しの下に飛び出すと、シャツを着ているのに背中がじりじりと焼け焦げていくような感覚。自分はこれが一番辛いなぁ。お日様は冬のポカポカ陽気が一番だなぁと思う。せめて、歩いている時は曇っていて眺望地点だけ晴れてりゃいいんだけどね(爆)

 北八ヶ岳の旅は始まったばかり、ここで無理をしても後が楽しく無くなるだろう。ともかく一刻も早く車に帰ってクーラーガンガン利かせて自販機(結局麓まで小一時間走ってやっとありつく)でコーラゼロを買って飲むのだ。

暑くてかなわない 先もあることだし今日はおしまい

越えていく筈だった双子山がちょっと恨めしい

とは言ってもやはり照り付ける日差しにゃ勝てない 頭の中はコーラゼロコーラゼロ(笑)

 大河原峠へ戻ってみると駐車場は満車で路駐の車まであった。平日なのに凄い人気だ。中には峠の雰囲気だけでも楽しもうと避暑がてらお弁当を広げている老夫婦も見られた。良い趣味だなと思った。

 明日歩く美ヶ原に至るには大河原峠から白樺湖に向けて降りるのが最短だが、残念なことに峠から先は通行止めとなっている。しかたがないので佐久に一旦降りて遠回りとなる。まだ時間も早いので軽くドライブといったところだ。

 途中で食料を調達しながらほぼ松本あたりまで走り、今度は美ヶ原公園沖線という山岳道路を延々と登っていく。終盤の武石峠手前あたりから車窓に拡がる胸をすくようなアルプス、眼前の広大な放牧場が織りなす風景もなかなか素晴らしい。この景色を目当てだけで走っても良い道路だ。

 道路は砂利道となり美ヶ原山頂の王ヶ頭まで続くが、一般車は『美ヶ原自然保護センター』の少し先でゲートに遮られる。その先は関係者のみで、王ヶ頭ホテルや山本小屋がマイクロバスで送迎してくれるようだ。

 美ヶ原へのアクセスは、ビーナスライン経由で『道の駅 美ヶ原高原』に車を置いてというパターンが殆どであろうが、王ヶ頭までの登り30分を苦にしなければ、こちらの『美ヶ原自然保護センター』もお勧めである。
 併設の売店(17時頃終了)と24時間トイレがあり一般登山者のみならず、車中泊愛好者にとってはこの時期標高の高い涼しい箇所として人気が出始めているという。

 一方、『道の駅 美ヶ原高原』の方は最も標高の高い所にある道の駅として有名であり、車中泊者が急増。中にはマナーの悪い人がいてゴミや騒音、長期間の駐車スペース占拠などで暗に車中泊禁止となっているらしい。

王ヶ頭の北側お膝元にある『美ヶ原自然保護センター』駐車場が今日の車中泊地だ

駐車場より北側の夕景

 暑かった夏の一日にもオレンジ色の優しい夕方の光が差し込んでくる。
 日没後に食事を終えて王ヶ頭方面をふと見るとホテルの送迎バスが坂道を遠く小さく登って行くのが見えた。他に灯りも少ない山肌をのろのろと登って行くその場違いな小さなバスからこぼれてくる車内灯の灯り。さながらトトロの猫バスみたいだなと思うのであった。

 日没頃から車中泊組が増えてきたが、中には到着するなりギターをかき鳴らして歌う若者がいた。
 これはちょっとうるさくてかなわんなぁと思っていると、ひとしきり歌い終わって帰っていった。降り注ぐ星空のもと、ギター一本で歌いにわざわざ来るなんて案外ロマンチストじゃん。

 車中泊の夜は各々色んな思いで、色んな楽しみ方があっても良いのだ。他人や社会、自然環境に迷惑をかけちゃいけないけどね。

 今夜もきっと冷えるだろう。念の為に持ってきたインナーシュラフを早速拡げて潜り込むと、やがて蓼科山の疲れに誘われるようにして眠りにつくことが出来た。

概略コースタイム

大河原峠発(06:43)-蓼科山荘(08:15)-山頂(08:45)-下山開始(09:15)-蓼科山荘(09:45)-
天祥寺平(11:15)-休憩後行動再開(11:45)-大河原峠着(12:28)

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北八ヶ岳方面 一日目

 過日の会津駒ケ岳車中泊作戦にて、涼しさはやはり標高が力なりと痛感した。
 帰宅後、標高の高い登山向けの車中泊適地を検索していると、いくつかの箇所が候補にあがった。
 標高が高いということは登山自体で登らなければならない標高差も少なくて済む。暑さ嫌いの自分としては行動時間が短縮されて願っても無いこと。早速それらを拾って北八ヶ岳界隈を歩く事にした。

 初日は移動のみ。一人で行くのだから高速なんて使うのはもっての他。時間で金を節約するのだ(爆)
 とはいっても下道200Km超えはなかなか骨が折れる。群馬県を横断するのに随分時間がかかったような気がするが、まだまだ往路で元気があるので勢いで走り切ることが出来た。

 それにしても暑い。途中、昼飯をとる為に『道の駅みょうぎ』に寄る。既に温度計は37度を越していた。あまり食欲も無いが、とりあえず腹に入れておかねば。
 この道の駅には、妙義山の登山口として登山者専用の駐車エリアも用意されている。眼前にそびえる山を見るといつかは登ってみたいと思うが、この酷暑の中で標高が1000m位のこの山に登るのは熱中症確定満貫レベルだ。涼しく(ちょっと寒く)なったらこの道の駅に前泊して登るのが良いだろう。

 佐久の市街地で今夜と明朝分の食料と水を調達し『蓼科スカイライン』を登っていく。標高があがるにつれ、気温計も気づけば20度台前半へ。エアコンを切って窓を開けると、少し湿っぽいが冷たい空気が心地よい。下界の酷暑が嘘のようだ。

 今日はひたすら移動だったが、『蓼科スカイライン』の途中に建設中の巨大パラボラアンテナがあった。思わず車を停めてカメラを向けた。比較対象物が写っていないのではっきりしないが、右下の建物も決して小さい訳ではない。このアンテナで宇宙からくる微弱な情報を傍受しようとするのだから大きさも頷けるというものだ。

JAXA 臼田宇宙空間観測所 GREAT54m局 (建設中)

 車の気温計が19度になった頃、今日の目的地である大河原峠へ到着。
 標高が約2100mもあると流石に涼しさも桁違いだ。

本日の車中泊地 大河原峠 蓼科牧場方面は昨年の台風被害で通行止め

 時間はまだ夕方の4時だから、設営して車内に閉じこもるのには少し早い。窓を全開にして涼しさを感じながら読書としゃれこむ。
 会津駒ケ岳の時に利用した『道の駅ひのえまた』ではアブの執拗な来訪で苦労したが、ここはアブやその他の虫はほぼ居ないので快適だ。たまに虫が飛んできても違う窓から抜けてくれるので世話無し。虫も閉じ込められないで済むので良いだろう。

トランクルームからの眺め 涼風が心地よい

右端の浅間山とその山塊

 遅い組の下山者の車が次々と走り去っていくにつれ、駐車場は段々と閑散としていった。一番最後の人は日没後の7時くらいだったかな。もうその頃には自分もすっかり設営が終わり、夕食後のコーヒーをシュラフに包まれ飲んでいた。

 寝る前にトイレに行こうと車外に出ると漆黒の闇が辺りを支配していた。夕方、眼下に見えた浅間山麓に広がる佐久市街地の明かりが宝石をちりばめたように輝いている。そして、空を仰ぎ見るとプラネタリウム以外ではめったに見られない沢山の星のまたたき。

 駐車場には恐らく週末しか営業しないであろうカフェや、当日は利用者が無くて無人の大河原ヒュッテがあるが、電気はきていないようだ。従ってトイレは一切の明かり無し。駐車した場所から数十メートルも離れているので、灯りを提げていかなければ辿り着くことさえままならない。子供の頃にトイレが怖くて行けないなんていうトラウマは無い(昨今の家屋ではそんなトイレはほぼ存在しないが)自分だが、ここだけはちょっと・・・
 昼間のことだが、トイレの入り口にある虫よけのネットを暖簾よろしく、くぐって中に入ると決まって何処からわからないが「こつん」と音がするのだ。恐らくドアか窓の建付けが悪くて空気の流れでそうなるのだろうが、薄暗いせいもあって結構不気味感がある。

 いままで、極めてよく整備されて灯りがこうこうとしているトイレがある道の駅しか車中泊に利用したことが無かったので、正直今回はガツンときたのは確か。頻尿の自分としては夜でも最低2回くらいはトイレに行きたい方だが、流石に今晩はなんとか頑張って朝まで我慢したい。それでも深夜2時頃に寒さで目を覚まし、仕方が無くトイレ行きを敢行した。
 空の星はますます美しく、周囲の闇の静寂さは妖しくも深まっていた。ライトのあかりだけではとてもトイレまで歩いて行ける自信が無い。申し訳ないが、車から少しだけ離れた笹薮の周囲を照らして何もいないのを確認してさっさと用を足して退散。背後からクマにガブリとやられるんじゃないかとヒヤヒヤだった。『車中泊仲間』は数台居たが、皆さん夢の中であろう。

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野木のひまわり

(8月4日撮影)

 野木のひまわり。
 新聞で5日に刈ってしまうと載っていたので慌てて4日に見に行く。

 コロナの影響でイベントも迷路も無かったが、初めて見る広大なひまわり畑に圧倒された。
 しかし、今年の夏は暑いなぁ。

むせかえるような暑さの中 健気に咲いている

青空! ちょっといじり過ぎちゃったかな

アップ

来年は是非迷路を歩いてみたい
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遂に念願のメジャーデビュー

 もう随分長い間、「今年こそは・・・」と思っていた県外のメジャーな山。
 自宅から登山口まで3時間を超えると急にハードルが高くなってなかなか気軽に予定することも出来ないでいた。
 こういった”遠く”の山は前泊、そして疲れた体でハンドルを握りたくない為、後泊も追加して計画したいと思っていた。
 そんな贅沢な休日の使い方をする山行計画は現役の頃はとても叶わぬ夢であったが、今の自分には何は無くとも時間だけは潤沢にある。

 そんな訳で懸案のアイコマを計画したものの、曲者だったのが天気予報である。
 予報ソースが異なる数種類のサイトを見ても、直前に発生した台風の進路等に乱され全然違う予報がされていた。そして時系列に猫の目のように違っていく。天気予報全体として信頼性が極めて低い状態が続いた。

 結局3日登頂の予定から始まり、全ての予報ソースの見立てが一致した段階で実行に移したのが6日登頂となった。休みありきで計画するのに比べると自由が利くので大変ありがたいことだ。現役の頃は休みがあっても天気に恵まれなかったり、折角天気が良くても野暮用に囚われて好機を逸してしまったりで、この辺の状況はまさに長年の留飲を下げる心地である。

 さて前置きが長くなってきたが、もう少し追加。
 先に書いたように今回は前泊である。自宅から道の駅檜枝岐までゆっくり走って約4時間。駐車地まで偵察を済ませて道の駅で車中泊の設営を済ませてもまだ周囲が明るい。ようやくあたりが薄暗くなり始めてから簡単な食事の支度。車中泊は夜間に何があるかわからないので飲酒が出来ないのが唯一残念だ。

 ドアを開けると速攻で侵入してくるアブ(別なドアからすぐ出てくれるので対応は楽)達も日暮れと共にねぐらへ帰ったのか、薄っすらとドアを開けておくと少しづつ冷やされてきた空気が心地よかった。やがて夜も更けると薄いひざ掛け一枚では肌寒くなり夏用シュラフに潜りこんだ。

 熟睡とまではいかないが、運転席で眠るのとは天と地の差あり。だがそんな浅い眠りも周囲の車中泊同胞がエンジンをかけて出かけていく音で目覚める。時計を見るとまだ3時だ。いかにしても早すぎとは思ったが、続々と発車していくエンジン音にせかされるようにして、自分もトイレだけは済ませそそくさと駐車地を目指す。

 狭い林道を文字通りヘッドライトの明かりのみを頼りに慎重に登っていく。最上部の駐車地に到達するとまだ数台しか停まっていなかった。首尾よく自分も止める場所にありつくことが出来たのだが、あの沢山の先発組は何処へ向かったのだろうか。尾瀬組ならば御池Pに車中泊する筈だ。

 さて、車を停めたところで流石にまだ早すぎる。薄明りになったら準備を始めようと再びシュラフに潜り込み、ふと気が付くと周囲の物音と朝の弱い光。あちゃー、寝坊しちゃったかなと思いきやまだまだ大丈夫だ。軽く朝飯をとって車の中で着替えを済ませていざ出発。見える範囲ではかなり下の方まで駐車の列が続き、後から後から登山者が登ってくる。流石日本百名山。平日をもってしてこの入山者の多さ。自分が日頃登っているような山とはやはり全然違うのだ。

ようやくこの登山口に立つことが出来た

 登山道は極めて整備状況が良い。全行程について下山後に思ったのは、危険個所無し、迷う箇所も皆無であったということ。というか黙って目の前の道を進んでいればそれでOKという気楽さだ。

 以前、こういったメジャーな山専門の人と栃木の比較的マイナーな山に登ったことがあったが、その時に聞いたのは「道標も無く、荒れた道が解りづらくて歩き難い」という評価であった。道標が無くても道が無くても地図とGPSがあれば的な歩きに慣れていると、メジャーな山はまるで高速道路でも走っているかの如くゴージャスな登山道と思えてしまう。これからはこういった山を楽しむ機会が増えるだろうが、やはり自分で考えながら登る山にもたまには行きたいところだ。

 朝の涼しい時間だというのに登り始めるとすぐに暑くなって山シャツの袖をめくる。先発のグループを途中で数組追い越しながら登って行くが、前半の高度稼ぎのジグザグ登山道はなかなか手ごわい。標高差1000mあまりを登るのだから当然といえば当然なのだ。焦ってもしょうがないので高度計を見ながら100m稼いだら小休止の繰り返しで詰めることにした。救いはまだ樹林帯に日が差し込んでいないが故のしのぎやすさである。

 今日は水を3本+緊急時用1本で合計2Lを担いでいる。
 通常の自分の登山なら500ml一本でおつりがくるくらいだが、長丁場で梅雨明け後の高い気温も考えると水不足は避けたいところだ。たったこれだけの増量なのに重い。装備が格段に増えるもテント泊なんて自分には無理かなといつもながら思うのだ。

序盤の地味な登りに汗を絞られるが、ちらっと見えた稜線で元気が出る

長かった標高獲得の戦いも、開けた眺望で癒されていく

おぉ!あれが駒の小屋か

牧歌的な、たおやかな稜線が素晴らしい

駒の小屋下から 山頂まで標高差80m位 いざ行かん

 駒の小屋下のベンチで休憩といきたかったが、数人の先客あり。他人と会話する可能性も否定出来ないので立ち止まって水を飲んですぐに出発する。眼前にお椀を伏せたように佇む山頂まで続く木道を見ると元気百倍(嘘、数倍くらいは出たかな)。
 抜けの良い眺望歩きは確かに楽しいが、やはり照り付ける直射日光にどんどん体力を奪われていくところが少し悲しいかな。恐らく20度は無いくらいの気温だろうが、自分的にはあと10度位温度が低ければ楽しく歩けるだろうにと悔やまれる。つくづく自分の耐暑能力をもう少し高くしたいと強く思うのであった。

振り返ると燧ケ岳 駒の小屋とその前の池塘はミニチュアのよう

山頂は案外地味 霞みが濃くて遠望は効かず

 山頂は山名板(ではなくて柱)の存在感が大きい。山座同定のプレートがあったが、高い気温の為に霞が濃くて遠くの山はあまりよく見えない。先客が一名食事中だったので写真だけを撮って先を急いだ。

山頂より中門岳方面へ向かう いやぁ素晴らしい稜線だ 残雪期に是非歩いてみたいものだ

どこまでも続く木道

向かい側の大戸沢岳 あの稜線もいつか歩いてみたい衝動に駆られるが藪道故に積雪期限定だとか

突然大きな池塘が現れる 中門池だ 柱にはこの周辺が中門岳とあるが?

 空の色を一杯に湛えた中門池に到着。やれやれとザックを降ろしコッペパンに齧りつく。今回は食料関係は極めて軽量化を図った分幾分味気ない。もっとも暑くてあまり食欲が出ないというのもあった。

 手短な食事休憩を終わらせてさてと腰を上げてスマホの地図を開くと、あ!そうか中門岳とされているピークはこの先だったかと気づき更に木道を進む。

こちらが地形図での中門岳 ここで大戸沢岳を眺めて食事にすりゃ良かったナ

下山はPLフィルターを装着したが調節が案外難しい

 下山時は同じ写真を撮るようになるのだからと思いPLフィルターを付けて撮影をした。これが思いの他難しかった。空の色とか水面の映り込みとかに意識して調節してみるも、シャッターを切った時はベストと思いきや実際パソコンで開いてみるとボツの山。使えたのは上と下の2枚くらいだ。それも結構パソコン側で補正してるのであまりPLフィルター使用の意味無しか。いや、やはり水面の反射コントロールには有効だったみたいだ。いずれにせよじっくりと”作品”を作るような人には有効なツールだが、思いつくままシャッターを切る自分にはちょっと使い難かったかな。

こちらもPLフィルターで撮影 結局大幅修正 これなら普通に撮っても同じかな(*´▽`*)

さようなら、涼しくなったらキリンテ下山にチャレンジしよう

 快適な頂上稜線を後にすればあとは登りに喘いだ道を下るのみ。そう、今回は初めてのアイコマ故に偵察の意味も込めてベーシックな滝沢登山口ピストンとしたが、正直正解だったかな。
 何故なら、やはり暑さに対する弱さが露呈してしまって、稜線上に咲き乱れる花々に気持ちを寄せる余裕も生まれず『暑い暑い』と念仏を唱えながらの歩き。とりわけ下山はとにかくヘロヘロのバテバテ。もちろんキツイ登りがあったからこその後半のバテとなる訳だが、休憩の度に給水を繰り返して500mlのペットボトル二本目に突入すると、明らかに疲れる飲むそして疲れるの負のスパイラルに嵌ったような気さえしてくる。やはりもう少し気温が低ければと思ったのは確かだ。

 正直、梅雨が明けたら尾瀬デビューして燧ケ岳や至仏山もと考えていたが、もっと涼しくなってからにしたほうが何倍も楽しむ事が出来よう。日和見だが、暑い夏は標高2000mくらいから登り始めて標高差も500mくらいの所がいいやと調べていると、信州にはそんな場所も幾つかあるようで、車中泊前提の新たな目的地探しに余念が無い自分である。

 下山後は駒の湯で汗を流す。お湯は透き通った単純泉。登山で薄っすら日焼けした腕が最初はチリチリと沁みた。そして、露店風呂から見える風景を眺めていると疲れがゆっくりと溶けだしていくのを感じた。今までの数少ない登山の後の温泉の中でも、アイコマのような大変な山の後は格別なご馳走である。

 ご馳走といえば、今晩も車中泊でのんびりしていくから、せめて裁ち蕎麦でもと思い立ち閉店時間ギリギリの店で蕎麦をいただく。客は自分一人で貸し切りだったが、素朴な味わいの裁ち蕎麦の風味と食感が念願の会津駒ケ岳登山の想い出になったのは言うまでも無い。

概略コースタイム等

今回は日本百名山の超が付くほどのスタンダードコースである滝沢登山口ピストン故に軌跡やデータの掲載は無し。
行動時間は休憩込の8時間5分。

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withコロナの時代

 延々と続く梅雨空と増え続けるコロナ感染者の報道。ともに鬱陶しい。
 西日本の豪雨被害に遭われた方、コロナで命を落とした方、過重な負荷に喘ぐ医療従事者や関係者の方々。
 経済的なダメージを受け、事業継続や、就業の危機を感じている方々。
 未曽有のこの災害に対して痛手を被っている方々の思いや如何ばかり。

 自分も影響が全く無かった訳ではないが、それでもあくまでも軽微。唯一の心配は今後”かからないうつさない”を維持できるかという点になるが、これだけ市中感染色が濃くなってくるとある意味あきらめムードさえ感じ始めている。

 なんて言うと自粛警察の人に吊るし上げられるかもしれないが、それでも人間だもの。生きてりゃいろいろと息抜きも必要さ。梅雨の合間の一休み。好天にほだされて散歩してしまうのも”夜の街”を楽しむ人たちと本質的な差が本当にあるのだろうかという疑問を禁じえない程『コロナ』に思考が蝕まれてしまったのだろうか。

 ともすれば集団主義に陥りやすい日本人にとって、今までそこそこ手堅く守ってくれていた母集団である組織とか国とかに俄かに『自己責任』を突き付けられているようでwithコロナの時代到来は生きづらい。

 かつて、”サービス”が無償のものから有償の価値あるものとして成長を遂げたように、今後襲ってくる自然の脅威に対して、我々は『自由に暮らす権利』とその結果に対する『責任』を常に突き付けられて生きていかなければならないのだ。(いままでもそうだったんだけどね)

 国家が全ての人達にとって最適解を見いだし、国民の安全と財産を守ってくれるというのはかねてから怪しい部分があったのは確かだが、今後ますます危うくなっていくかもしれないと思うと、自分達はまだよいが子供や孫の将来を考えると心が痛むのだ。

大谷川公園へやってきた 雲が無ければ日光連山パノラマの筈なんだけど

桔梗の紫が鮮やか

ユリが咲いているとは思わなかったので収穫

夏らしい雲だけど・・・梅雨明けはまだまだ先らしい コロナ収束はまったく見えず
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