遂に念願のメジャーデビュー

 もう随分長い間、「今年こそは・・・」と思っていた県外のメジャーな山。
 自宅から登山口まで3時間を超えると急にハードルが高くなってなかなか気軽に予定することも出来ないでいた。
 こういった”遠く”の山は前泊、そして疲れた体でハンドルを握りたくない為、後泊も追加して計画したいと思っていた。
 そんな贅沢な休日の使い方をする山行計画は現役の頃はとても叶わぬ夢であったが、今の自分には何は無くとも時間だけは潤沢にある。

 そんな訳で懸案のアイコマを計画したものの、曲者だったのが天気予報である。
 予報ソースが異なる数種類のサイトを見ても、直前に発生した台風の進路等に乱され全然違う予報がされていた。そして時系列に猫の目のように違っていく。天気予報全体として信頼性が極めて低い状態が続いた。

 結局3日登頂の予定から始まり、全ての予報ソースの見立てが一致した段階で実行に移したのが6日登頂となった。休みありきで計画するのに比べると自由が利くので大変ありがたいことだ。現役の頃は休みがあっても天気に恵まれなかったり、折角天気が良くても野暮用に囚われて好機を逸してしまったりで、この辺の状況はまさに長年の留飲を下げる心地である。

 さて前置きが長くなってきたが、もう少し追加。
 先に書いたように今回は前泊である。自宅から道の駅檜枝岐までゆっくり走って約4時間。駐車地まで偵察を済ませて道の駅で車中泊の設営を済ませてもまだ周囲が明るい。ようやくあたりが薄暗くなり始めてから簡単な食事の支度。車中泊は夜間に何があるかわからないので飲酒が出来ないのが唯一残念だ。

 ドアを開けると速攻で侵入してくるアブ(別なドアからすぐ出てくれるので対応は楽)達も日暮れと共にねぐらへ帰ったのか、薄っすらとドアを開けておくと少しづつ冷やされてきた空気が心地よかった。やがて夜も更けると薄いひざ掛け一枚では肌寒くなり夏用シュラフに潜りこんだ。

 熟睡とまではいかないが、運転席で眠るのとは天と地の差あり。だがそんな浅い眠りも周囲の車中泊同胞がエンジンをかけて出かけていく音で目覚める。時計を見るとまだ3時だ。いかにしても早すぎとは思ったが、続々と発車していくエンジン音にせかされるようにして、自分もトイレだけは済ませそそくさと駐車地を目指す。

 狭い林道を文字通りヘッドライトの明かりのみを頼りに慎重に登っていく。最上部の駐車地に到達するとまだ数台しか停まっていなかった。首尾よく自分も止める場所にありつくことが出来たのだが、あの沢山の先発組は何処へ向かったのだろうか。尾瀬組ならば御池Pに車中泊する筈だ。

 さて、車を停めたところで流石にまだ早すぎる。薄明りになったら準備を始めようと再びシュラフに潜り込み、ふと気が付くと周囲の物音と朝の弱い光。あちゃー、寝坊しちゃったかなと思いきやまだまだ大丈夫だ。軽く朝飯をとって車の中で着替えを済ませていざ出発。見える範囲ではかなり下の方まで駐車の列が続き、後から後から登山者が登ってくる。流石日本百名山。平日をもってしてこの入山者の多さ。自分が日頃登っているような山とはやはり全然違うのだ。

ようやくこの登山口に立つことが出来た

 登山道は極めて整備状況が良い。全行程について下山後に思ったのは、危険個所無し、迷う箇所も皆無であったということ。というか黙って目の前の道を進んでいればそれでOKという気楽さだ。

 以前、こういったメジャーな山専門の人と栃木の比較的マイナーな山に登ったことがあったが、その時に聞いたのは「道標も無く、荒れた道が解りづらくて歩き難い」という評価であった。道標が無くても道が無くても地図とGPSがあれば的な歩きに慣れていると、メジャーな山はまるで高速道路でも走っているかの如くゴージャスな登山道と思えてしまう。これからはこういった山を楽しむ機会が増えるだろうが、やはり自分で考えながら登る山にもたまには行きたいところだ。

 朝の涼しい時間だというのに登り始めるとすぐに暑くなって山シャツの袖をめくる。先発のグループを途中で数組追い越しながら登って行くが、前半の高度稼ぎのジグザグ登山道はなかなか手ごわい。標高差1000mあまりを登るのだから当然といえば当然なのだ。焦ってもしょうがないので高度計を見ながら100m稼いだら小休止の繰り返しで詰めることにした。救いはまだ樹林帯に日が差し込んでいないが故のしのぎやすさである。

 今日は水を3本+緊急時用1本で合計2Lを担いでいる。
 通常の自分の登山なら500ml一本でおつりがくるくらいだが、長丁場で梅雨明け後の高い気温も考えると水不足は避けたいところだ。たったこれだけの増量なのに重い。装備が格段に増えるもテント泊なんて自分には無理かなといつもながら思うのだ。

序盤の地味な登りに汗を絞られるが、ちらっと見えた稜線で元気が出る

長かった標高獲得の戦いも、開けた眺望で癒されていく

おぉ!あれが駒の小屋か

牧歌的な、たおやかな稜線が素晴らしい

駒の小屋下から 山頂まで標高差80m位 いざ行かん

 駒の小屋下のベンチで休憩といきたかったが、数人の先客あり。他人と会話する可能性も否定出来ないので立ち止まって水を飲んですぐに出発する。眼前にお椀を伏せたように佇む山頂まで続く木道を見ると元気百倍(嘘、数倍くらいは出たかな)。
 抜けの良い眺望歩きは確かに楽しいが、やはり照り付ける直射日光にどんどん体力を奪われていくところが少し悲しいかな。恐らく20度は無いくらいの気温だろうが、自分的にはあと10度位温度が低ければ楽しく歩けるだろうにと悔やまれる。つくづく自分の耐暑能力をもう少し高くしたいと強く思うのであった。

振り返ると燧ケ岳 駒の小屋とその前の池塘はミニチュアのよう

山頂は案外地味 霞みが濃くて遠望は効かず

 山頂は山名板(ではなくて柱)の存在感が大きい。山座同定のプレートがあったが、高い気温の為に霞が濃くて遠くの山はあまりよく見えない。先客が一名食事中だったので写真だけを撮って先を急いだ。

山頂より中門岳方面へ向かう いやぁ素晴らしい稜線だ 残雪期に是非歩いてみたいものだ

どこまでも続く木道

向かい側の大戸沢岳 あの稜線もいつか歩いてみたい衝動に駆られるが藪道故に積雪期限定だとか

突然大きな池塘が現れる 中門池だ 柱にはこの周辺が中門岳とあるが?

 空の色を一杯に湛えた中門池に到着。やれやれとザックを降ろしコッペパンに齧りつく。今回は食料関係は極めて軽量化を図った分幾分味気ない。もっとも暑くてあまり食欲が出ないというのもあった。

 手短な食事休憩を終わらせてさてと腰を上げてスマホの地図を開くと、あ!そうか中門岳とされているピークはこの先だったかと気づき更に木道を進む。

こちらが地形図での中門岳 ここで大戸沢岳を眺めて食事にすりゃ良かったナ

下山はPLフィルターを装着したが調節が案外難しい

 下山時は同じ写真を撮るようになるのだからと思いPLフィルターを付けて撮影をした。これが思いの他難しかった。空の色とか水面の映り込みとかに意識して調節してみるも、シャッターを切った時はベストと思いきや実際パソコンで開いてみるとボツの山。使えたのは上と下の2枚くらいだ。それも結構パソコン側で補正してるのであまりPLフィルター使用の意味無しか。いや、やはり水面の反射コントロールには有効だったみたいだ。いずれにせよじっくりと”作品”を作るような人には有効なツールだが、思いつくままシャッターを切る自分にはちょっと使い難かったかな。

こちらもPLフィルターで撮影 結局大幅修正 これなら普通に撮っても同じかな(*´▽`*)

さようなら、涼しくなったらキリンテ下山にチャレンジしよう

 快適な頂上稜線を後にすればあとは登りに喘いだ道を下るのみ。そう、今回は初めてのアイコマ故に偵察の意味も込めてベーシックな滝沢登山口ピストンとしたが、正直正解だったかな。
 何故なら、やはり暑さに対する弱さが露呈してしまって、稜線上に咲き乱れる花々に気持ちを寄せる余裕も生まれず『暑い暑い』と念仏を唱えながらの歩き。とりわけ下山はとにかくヘロヘロのバテバテ。もちろんキツイ登りがあったからこその後半のバテとなる訳だが、休憩の度に給水を繰り返して500mlのペットボトル二本目に突入すると、明らかに疲れる飲むそして疲れるの負のスパイラルに嵌ったような気さえしてくる。やはりもう少し気温が低ければと思ったのは確かだ。

 正直、梅雨が明けたら尾瀬デビューして燧ケ岳や至仏山もと考えていたが、もっと涼しくなってからにしたほうが何倍も楽しむ事が出来よう。日和見だが、暑い夏は標高2000mくらいから登り始めて標高差も500mくらいの所がいいやと調べていると、信州にはそんな場所も幾つかあるようで、車中泊前提の新たな目的地探しに余念が無い自分である。

 下山後は駒の湯で汗を流す。お湯は透き通った単純泉。登山で薄っすら日焼けした腕が最初はチリチリと沁みた。そして、露店風呂から見える風景を眺めていると疲れがゆっくりと溶けだしていくのを感じた。今までの数少ない登山の後の温泉の中でも、アイコマのような大変な山の後は格別なご馳走である。

 ご馳走といえば、今晩も車中泊でのんびりしていくから、せめて裁ち蕎麦でもと思い立ち閉店時間ギリギリの店で蕎麦をいただく。客は自分一人で貸し切りだったが、素朴な味わいの裁ち蕎麦の風味と食感が念願の会津駒ケ岳登山の想い出になったのは言うまでも無い。

概略コースタイム等

今回は日本百名山の超が付くほどのスタンダードコースである滝沢登山口ピストン故に軌跡やデータの掲載は無し。
行動時間は休憩込の8時間5分。

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4 Responses to 遂に念願のメジャーデビュー

  1. リンゴ より:

    これはまた、最高の天気に恵まれた初アイコマ詣でとなりましたね。
    山頂一帯に広がる高層湿原とたおやかなる稜線、存分に楽しまれた事と思います。
    前後の車中泊と言うのものんびり出来ていいですね。
    自分のリタイア後の夢は車中泊で巡る東北地方(秋田、山形、岩手)への山旅です。
    好展望稜線と花のある山を狙っているのですが、6月の梅雨時がベストなので天気を見ながらとなります。
    PLフィルターは自分も効果がイマイチ分からず。紅葉時期に再チャレンジと考えています。

    • まっちゃん より:

      今までリンゴさんやchikoやんの記事を涎を垂らして眺めていたアイコマ。やっと登ることが出来ました。
      でも、実に大きな山ですね。
      正直、久しぶりに登るのが大変な山でしたが、ちゃんとご褒美が出てくるそんな懐の深い山でもありました。
      キリンテ下山、御池下山、そして残雪期も是非登りたい山です。

      東北も素晴らしい山が沢山ありますね。
      コロナ騒動が無ければ今年の秋には東北遠征も考えていたのですが、どうなることやら。

      今回のアイコマは暑さを差し引けば大満足の山行でした。
      でも夏の残りは『涼しさ』をテーマにしてあと何回かプチ遠征をと考えています。

  2. 帆夏ちゃんのG より:

    若き頃は 幾度かあの景色を見たのだなと まっちゃんが撮影した写真をしみじみ見ました。
    会津駒から中門岳の稜線は 本当にきれいですよね。 

    春の残雪時期にも 山スキーで登ったこともありました。稜線は真っ白で広々としてましたね。
    あの頃は 会津駒山頂へのヘリスキーもあったのですが 勿論 貧しい私たちは 山スキーでの
    苦行登山でした。でも下りは楽ちん楽ちん。 

    会津駒と中門岳の尾根を越え 反対側の御神楽沢源流でイワナ釣りを楽しんだこともありましたよ。

    まっちゃんの県外遠征登山紀行 これからも楽しく読ませてもらいます。暑いのでご自愛下さい。

    • まっちゃん より:

      体力不足で、若い頃に山登りをしていればなと思う事が多々あります。
      セローさんは若い頃からいろいろやっていたようで羨ましいです。
      自分はその分なんとか取り戻そうとあがいていますが、年寄りの冷や水にならないように注意しながら細く長くやっていこうと思います。

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