陣地攻略!しかし、退路が・・・

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
関連山行
    2011年5月15日  大戸川源流を詰め熊鷹山系5座縦走

 氷室山周辺の地形図を眺めていて強く印象に残った点名がある。「陣地」だ。

 ネットを漁ると幾つか記録が見つかるが、地味な三角点らしく、皆さん手短に最短コースをとったり蓬莱山側から尾根に登って目指すパターンが多い。
 自分ならこう歩きたい、という思いのまま一年以上過ぎてしまったが、先日のとある偵察で理想的な取付き地と駐車地を見つけることが出来た。後は実行するだけである。

 今回は自転車デポも必要だし、なにせコースが長めなので早起きをして宇都宮を発つ。最近山にあまり行っていなかったせいか、正直いささか辛かったが、車を走らせる程に頭もスッキリしてくる。
 旗川沿いを走る頃になると、キリリと冷たい朝日が民家の裏山に差し込む。そんな朝の儀式のような風景を横目に、奥へ奥へと車を走らせ熊穴橋へと到着。こんな早い時間なのに既に二台の車があったが、もぬけの殻で出発していた。
 手早くガードレールに自転車をロックして踵を返した。目論見の駐車地へパジェロミニを置き、さぁ出発だ。 

旗川沿いに注ぐ朝日
空きスペースに停めさせていただいた
ここを左に入る


 林道へ入り、少し進んだ箇所が今日の取付き点だ。山仕事の人が使っているのか、上へと踏み跡が伸びている。これを追うと、始めは足場の悪い急登だが、たちまちブル道が出てきた。巻き気味になった所で尾根の芯へと補正する。

少し進んで予定の取付き
ブル道を行く
尾根の芯を外さぬように


 基本的に枝打ちされている明るめの植林地であるが、531mP近くになると片側が自然林となり断然良い雰囲気となる。送電線の伸びる先にあるのが807.2m三角点の東蓬莱山であろう。

段々明るくなってきた
植生界になると断然心地よい
東蓬莱山(807.2mP)が見える


 サクサクと踏む落ち葉も心地よく、178番鉄塔へ到着。人知れぬ山中で鉄塔に出くわす経験は何度もあるが、いつもその巨大さには圧倒される。大体、普通の生活居住域では鉄塔の真下にはなかなか近づけないものだ。

落ち葉が心地よい
178番鉄塔へ到達


 やがて807.2m三角点の東蓬莱山へ到着。これといった特徴の無いピークだ。ネットで見た写真では山名板があった筈だが、標高を記したR・K氏のプレートが一枚架かるのみ。地形図では名前が記されていないので東蓬莱山は俗称なのだろう。
 更に進んでいくと、右手遠くに白いものが積もった箇所が目に入った。遠目にもはっきりと送電用でない鉄塔のようなものが見える。方塞山によく似た雰囲気だが、帰宅後地図を精査しても見える筈がないので一体何処なのかは謎である。

東蓬莱山
白いものが積もるあそこは?
冬枯れは最高だ


 高さ4~5mもあろうか。それまで、ひたすら穏やかだったルートに忽然と岩が出現する。この後も段々と岩混じりになってくるが、歩くのに問題は全く無し。変化と感じれば楽しい尾根行脚である。

初めて大きな岩が出現
岩混じりを下る
時折急登


 やがて伐採地へと飛び出した。結論から言うと本日のルートで唯一の眺望地点であった。ここまで比較的木樹に囲まれて歩き続けてきたせいか、空へ放たれた感じがなんとも爽快だ。

伐採地があった
遠く筑波山から北に伸びる稜線


 伐採地を過ぎると、一瞬ではあるが今度は一転して西側へ開ける地点を通過する。熊鷹山から伸びる南東尾根はゴツゴツした枝尾根を従え、鷲の翼を思わせる荒々しさ。まるで尾根と谷を説明している教科書写真のようでもある。この尾根は西沢登山口への下山で序盤が使われているが、尾根末端の蓬山ログビレッジあたりから通しで歩くのも面白そうだ。

古賀志山と二股山
伐採地頂部より南側
熊鷹山から伸びる南東尾根


 崩壊しかけた石祠を山中で見かけることは多いが、今回のルートでは胴体の部分が無くなって屋根と土台だけになっているものを何箇所か見た。大戸川上流の住民か、東の秋山川沿いの木浦原の人達なのか、比較的里から離れているこの場所へ石祠を建立した人々へ思いを寄せる。

屋根だけ残った石祠
次のピークが陣地のようだ
根が張り出した急登が待ち受ける


 陣地へ到着。情報通りの地味なピークであるが、俗称である陣ノ手の山名板が一枚山頂を守っている。その傍らに、自己主張するかのように木に巻きつけられた黄色テープに陣地とある。景色も殆ど無いし、先刻より風が幾分強くなってきた。北の山を見ると比較的近くまで白く煙った雪雲に覆われている。手袋を外すと手がかじかむように冷たい。一瞬迷ったがここまで休憩せずに来たのだし、『陣地』という名前に惹かれてやって来たのだから、食事をするなら此処しかないだろう。

陣地へ到着


 カップラーメンと定番のコーヒーで体を温めてから再出発。陣地より北に進むと、だだっ広い尾根に出る。日差しが降り注ぐ箇所は凍えた体に優しいことこの上なし。やがて再び岩混じりとなった小ピークにぽつねんと陣地を向く石祠あり。

眺望は東側にかろうじて
陣地よりさらに進み広尾根
日差しが暖かい
再び岩混じり
その上に石祠
陣地に向いている


 眼下に建設中の道路が見え隠れする。熊穴橋の閉鎖ゲートから先に道路が伸びているのは知っていたが、まさかこんなところまで出来ていたとは。だが、この事実が思わぬ事態へと進展することをこの時点では気づいていない。
 ルートも終盤、向こうに見える1040m級Pを乗り越えれば、後は三滝方面へ降りて下山の途に着くという予定であった。

建設中の道路が眼下に
最後に越える1040m級P
なんと書いてあったのだろうか


 すっかり字が消えてしまった板が淋しげな1040m級Pを超え、氷室山へ伸びる稜線にて本日初めての道標を見る。以前、沢を詰めて尾根へ登り上がった時に通過したことがあるので懐かしい。今日は此処を降りて沢に向かう予定なのだが・・・何故か踏み跡が全く見当たらない。微かな踏跡も逃すまいと目を凝らしながら、かつての『道』をさぐるように辿ってみる。
 下って行き見えてきたのは、愕然!建設中の道路で進路が寸断されているのだ。しかも法面が高く、到底路面へ降りることは出来ない。これは痛い!
 しばし周囲を偵察するも、安全に降りることの出来そうな箇所は見当たらない。道が上に向けて伸び、宝生山の西北西の鞍部をかすめるあたりが降下しやすそうに見える。そちらからトライするのが妥当と判断し、移動を開始した。時間は午後2時、日没まで残すところ2時間ちょいである。ヘッドライトと予備の電池は前日チェックしてザックの中にあるので万が一の場合はなんとかなるが、出来れば世話にならずに下山を完了したいところだ。

ここより笹が出る
本日初めての道標だったが・・・
三滝方面への降下断念


 一旦登り返し、予定外であった宝生山を踏む。ここより南東の岩尾根を下り、先ほど考えた地点からの降下を試みるのだ。所々テープがあるので何らかの理由で往来のある可能性がある。無事車道へ降りることが出来れば良いのだが。

 写真を撮る余裕が無かったが、あと少しで車道というところでやはり無残にもコンクリート製の高い法面に阻まれた。標高差にして100m近くの登り返しは結構キツイ。このまま場所を換えて試行錯誤を重ねても時間と体力を消耗するばかりだろう。十二山方面へ向かえば必ず林道と接合する筈だからこのまま進んだほうが無難だろうと腹をくくった。
 程なく、上から見る限り降りやすそうな感じの場所が見つかった。少し降りて偵察すると、なんと法面が全く無い。降りるならまさに此処しか無い。

予定外の宝生山
ここはいけそうだな
おぉ、法面が切れているではないか


 高低差50m程であったが、慎重に降りれば問題なし。無事道路へ降り立ったが、ここからが大変だ。林道の出口は熊穴橋の自転車を置いた地点なのでゴールとしてはバッチリなのだが、山腹を縫うように作られた林道を延々と歩かなければならない。地図にも記載が無いから距離がまったく読めないのだ。

無事道路へ着陸
沢入側へも完成しているらしい
さぁ、これから戻るべし


 三滝方面への登山道を探してみたが、降下点はまったく見いだせなかった。こう状況が変わってしまっては迂闊に行動しないほうがよいだろう。どのくらい時間がかかるかわからないが、道路を素直に歩くのが無難というものだ。

初めに降りたかった箇所、これは無理だ
林道歩きを癒やす眺望もあり


 延々と伸びるつづら折れの先に、夕餌を探し求める数頭の猿の群れが見える。熊鈴を勢い良く鳴らす侵入者に気づくと、慌てて山腹へと蜘蛛の子を散らすように身を隠した。いろは坂あたりの人を恐れない猿と違い慎重な彼らだが、いたずら盛りの小猿は侵入者に興味津津、枯れ枝の間から身を乗り出してこちらを伺っている。

道路標識も淋しげ
斜面全体が大胆に砂防ダム化している
車道歩きはどこまでも


 山を照らす光が徐々に力を失っていく。仰ぎ見る尾根には残照が輝いているが、もう谷には届かない。GPS画面を覗きこむ度、熊穴橋に幾度と無く近づいたり遠のいたりしていた道路歩きもようやく終点だ。手早く自転車をガードレールから開放して帰りの道を一気に下って行った。脇の草むらから飛び出した一頭のイノシシが、突然現れた自転車から逃げるようにして道路を横断し、そしてまた茂みに消えていった。

 今回はすっかりオーバータイムになってしまった。猛省すべきはやはり事前の情報収集が足りなかった点である。この道路工事についてはネットで報告されていたのだ。また、グーグルアースで最新の画像を見ると見事に道路(作原沢入線)の完成具合が確認出来る。こういったことも事前調査で押さえておかなければならないとは、ますますルーファン歩きは奥が深いと感じた。

2つ目のゲート(熊穴橋)で自転車回収

概略コースタイム

駐車地発(07:45)-531mP(08:37)-東蓬莱山(09:36)-856mP(10:58)-陣地(11:27)-昼食休憩-
行動再開(12:07)-三滝分岐(13:47)-同分岐へ戻る(14:06)-宝生山(14:23)-道路降下失敗で戻る(14:48)-
道路降下成功(14:57)-熊穴橋(16:22)-自転車に乗換-駐車地着(16:47)

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陣地攻略!しかし、退路が・・・ への8件のコメント

  1. Non より:

     こんばんは。一気に拝読しました。「陣地」という山名、おぼろげに見たような記憶もありますが、
    男性の方が心惹かれるでしょうね。どんな謂れなのか、それとも実際に陣地だったのか(^^)
     舗装路、工事がかなり進んでいることは、春ごろに確認した記憶があるのですが、
    こんなにも距離が伸びていたんですね~ 驚くと同時に、ちょっとさびしいような・・・
    どこまでのコンクリ法面がつづくのって、ハイカー泣かせですよね。どうしようもできないし。
     それにしても、久しぶりの山行で、これだけの距離。さすがだなぁと思うと同時に、
    まっちゃんさんらしいなぁとも思いました。お疲れ様でした(^^)

    • まっちゃん より:

      この道路、工事自体はほぼ完成している模様で、新年度には開通するのではと言われています。
      開通すると、宝生山まで車を降りて10分たらずで立ててしまうという状況になります。

      法面には泣きました。えぇ!ってな感じで。
      道路が開通するまでの間だけでも、三滝方面へのロープや階段、道標の設置はして欲しかったものです。
      もっとも、陣地方面からやってくる者にはそういった行政サービスは受けられないのかな(^o^)

  2. リンゴ より:

    お疲れ様でした。
    久しぶりの全力山レポ、内容、文章ともに相変わらずの素晴らしさに感服しました。
    「陣地」、確かに興味をそそられる点名。由来が知りたくなりますね。

    • まっちゃん より:

      俗称が『陣ノ手』ということなのでますます興味深いですね。

      陣地というと、子供の頃空き地に廃材など集めて秘密基地(丸見えなので全然秘密じゃないのだが)ごっこなんてのをしていたのが懐かしいです。
      グループに分かれて戦争ごっこ(今の時代こんな事言うと物騒ですが)に興じた思い出あります。
      お互い斥候を出したりして、まさに基地=陣地でした。

  3. ケン坊 より:

    おはようございます。
    流石はまっちゃんですね~  と言ったら失礼ですよね。
    毎回、同じようなコメになっちゃいますが...
    読むたび(写真を)見るたびにため息の連続です。
    ”陣地”という名前を初めて知りました。陣地と言えば
    子供の頃に”陣取り”という遊びがあって盛り上がった
    ことが思い出されます...
    その遊びを今思うと、陣地に辿りつくのに敵の邪魔を
    除けながら...途中で挫折したりコースアウトしたり
    今回のソレとは比べ物になりませんが、陣地という地点は
    大変な場所にあるんだろうなと思いました。
    ところで宝生山辺りに雪は無かったんですか? 
    氷室山が未踏なので落葉の季節にと思いつつ、今年も
    タイミングを失ってしまいましたが...

    • まっちゃん より:

      陣地という山名はホント変わっていて面白いですよね。
      その昔、この地を治める有力者達に何か関わりがあるのでしょうか。
      標高数百メートルの低山だと山城という可能性もありますが、ちょっとこの高さだとそれも無しかなと。

      雪はまだありませんでした。
      ここのところ平地でも雪がちらついたりしていますから、積もるような雪が来れば暫くは残るかもしれませんね。
      作原沢入線が開通したあかつきには、宝生山、氷室山は散策コースになってしまうかもしれません。
      まぁ、それはそれでまた自転車で周回の可能性が広がるので楽しみです。

  4. 亀三郎 より:

    おはようございます^^
    うほっ、わたしもケン坊さんと同じく 栃木百名山「氷室山」未踏なので
    こちらの林道の情報は、すごく貴重でした^^v
    新年度開通、、、メモメモ
    最短距離ピークハンターの亀家としては
    すごく楽しみになってきました (^_^;)(^_^;)
    春になったら
    駐車地情報含めて
    また、詳しく教えてもらうかも、、、なので
    よろしくお願い致します。(ペコリ)

    • まっちゃん より:

      宝生山近くのあたりに駐車場ができれば氷室山は最短攻略可能になります。
      自然が姿を変えてしまったのは残念ですが、環境に配慮しながら使っていきたい道路。
      開通が楽しみですね(^_^)/

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