リベンジの前黒山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースは全て一般登山道ではありません。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 昨年2月、敗退した前黒山に再チャレンジ。前回は若者達のペースに合わせることが出来ずにアプローチの林道で既に消耗してしまって核心部の登りでチームのペースを維持すること叶わずと判断して離脱したのだった。

 今回は、前回の「栃木百名山」コースをベースとして、途中より山頂北西尾根を詰めるルートではなく、北側の大沼園地方面のヨシ沼駐車場を起点とし、通行止め林道を使いアプローチする。取付き後は北北東の尾根筋を拾っていくルートとした。

 このルートの先人の記録を見ると、前黒山の北側主尾根に乗るまでは皆さんめいめいにルーファンでばらけている。下部は概ね植林帯なので有視界のルート取りは簡単なように思えるが、雪深きこの時期は下手に踏み込むとまずいという心理も働いて案外難しい。また、このルートは無雪期は殆ど歩かれていないようなのできっと雪の下は藪が濃いのかもしれない。途中に自然林地帯が有り、そこなども藪の可能性は否定できない。植林地自体は下草があまり育たないので結構歩きやすい筈なのだが、この時期はそんな想像も全て雪に閉ざされ封印されてしまっているのだ。

 また、今回はスノーシューを遂に更新。欲しかったMSRのライトニングアッセントを手に入れて初のスノーフィールドとなった。使用感はというと、 何故今まで買わなかったのか? 今までのスノーシューはいったい何だったのだろうと思える程の強力な効果を発揮してくれた。正直、今回のルートもこのスノーシュー無しでは完遂出来なかっただろう事を書き添えておこう。

 

 駐車地探しに若干手間取ったが、道路両側は除雪車の雪の壁なので路駐はほぼ無理だ。新湯富士の南にあるヨシ沼駐車場の場所にかろうじて二台位駐められそうなのでここへ車を置く。車道を進むとすぐ右手に林道の入り口が見えた。まずはこの林道を進むが、いきなりの深雪だ。初めて装着するライトンニングアッセントのフィーリングや如何に。

唯一の駐車スペース
林道入口
積雪は1m以上ありそうだ

 林道ゆえ傾斜も緩く準備運動としてはよろしい。雪は適度に締まっており沈み込みも無く快適だ。ライトンニングアッセントは履いた時の軽さが全然違うように感じる。今まで使っていたのが2Kgに比べて1.7Kg。僅か
300gの減だが、かかとを上げた時に引きずるテールの角度などが影響しているのかもしれない。

 「林道の途中から登りやすそうな箇所を選んで・・・」という記述が先人の報告にあったので気をつけながら進んでいく。林道が少し左に逸れるころ、丁度良い塩梅の取り付き点があった。ここしか無いだろう。
 植林地に足を踏み入れ、まずは周囲を観察。右手に小尾根がある。地図を見ると微かに尾根形があるので間違いは無い。まずはこれを登ることにした。

林道歩きはおだやか
ここから取り付く
右手の小尾根をまず登る

 歩き始めは快適だったが、上のほうに行くにつれ樹高が低くなってきて枝が邪魔になってくる。藪こぎならぬ枝漕ぎの様相。この時期ならではのお楽しみだろう。スノーシューの具合はというと、もう最高!言葉に言い表せない程快適だ。大袈裟に表現すればノーマルタイヤからスタッドレスに履き替えた位の変化と言っても過言では無い。

上のほうに行くと枝がうるさい
ふと振り向くと
正面に日留賀岳

 枝が濃密なところは流石に藪好きの自分も滅入るが、それでも曖昧な稜線を外すと苦労する可能性があるので方角通りにセンターキープに努める。やがて枝越しに明るさが見えてきたので近づくと牧柵が現れた。先程歩いてきた林道の更に奥まで行けばこの牧柵の起点から登ることが出来たのかもしれない。
 牧柵の脇は適度にスペースがあって歩きやすい。たまに張り出した枝がとうせんぼをしているが、逆らわずに右手の樹林の手薄な箇所を探って巻く。

 想定していたルートと若干ずれ始めていたので歩き易い牧柵とは一旦お分れして軌道修正すべく進路を取り直した。始めはやはり枝漕ぎだったが、すぐに枝打ちされた背の高い植林帯へ。更に高度を上げていくと陽光眩しい自然林へと変化していく。針葉樹林は雪面に枝葉が落ちていて見た目にもあまり綺麗でない。何よりも鬱蒼とした感じがするが、やはり明るい自然林は美しい。ふと目を上げると、太いふさふさの尻尾の小動物が雪面を慌てて駆け抜けあっという間に木に駆け上っていくのが見えた。こんな豊かな森なら雪の無い季節は熊も居るかもしれないな。やはりこのルートは冬季限定なのだろう。

牧柵が出現脇、樹林を避けて沿いながら進む
再び植林帯へ
自然林もあり変化に富む

 1470m地点で山頂から北に伸びる主尾根に到達。左に90度方向転換し、幅の狭い明瞭な尾根を詰めれば山頂へと届く筈だ。ここまでのいささか曖昧な感じのルート取りに神経を使ったせいかほっと一息つく。

 だが喜ぶのは早い。主稜線は風で出来た波のような雪の起伏がうねうねと続いて歩きにくいことこのうえなし。序盤は雪壁超えだけで済んだが、先に行くと通過しやすい箇所を選ぶとそこにに枝が張り出していて下からも上からも責められる。加えて斜度もきつくなり、今日一番の難所だ。

 初めて経験するヒールリフター(スノーシューで急斜面を登る時にかかと位置を上げる装置のこと)の絶大な効果のお陰で、散歩用スノーシューならかなり難渋するであろうこの区間も無事通過。ライトニングアッセント(稲妻のような登り)とはいかなくとも着実にクリアすることが出来た。道具は己の能力の弱点を補うものという定義を今更ながら深く理解する瞬間でもあった。

主尾根は風紋で障害物越えの様相
前黒山、東方1700mPより伸びる稜線

 正面に山頂が見えると一気に元気が湧き上がってくる。明るい無垢な雪面に惜しげも無く足跡を付けながら一歩また一歩と詰めていく。頂陵の平坦部に出て僅かに進むとようやく山名板が見えた。足跡一つ無い山頂に・・・まてよ、ウサギか何かに先を越されていたようである(^^;

山頂が見えてきた
明るい尾根はやはり良いものだ
山頂到着 ウサギに先を越されたようだ

 山頂から見る北側は枝越しですっきりしないが、南と西はよく開けている。標高にして僅か50mしか低くないのに眼下の明神岳がかなり下に見える。明神岳の北西斜面には、こちらからは見えないがハンターマウンテンスキー場。時折風に乗って流れてくる音楽を聞いていると、ゲレンデを彩るスキーヤーやボーダーの姿が浮かんでくる。

 正面に大きく鶏頂山から釈迦ヶ岳、左手に稜線を辿ると剣ヶ峰。剣ヶ峰は大間々方面から登るとあまり印象に無いが、こちらから見るとなかなか鋭敏なピークである。更に東に目を転じると1700mPが堂々と鎮座している。標高はあちらのほうが高いので次回訪れる時は是非踏んで帰りたいところだ。

左手前は明神岳 奥に日光連山
釈迦ヶ岳と鶏頂山

剣ヶ峰
前黒山 東の1700m級P
北側眺望は枝越し

 東から少し雲が流れてくるが大勢に影響なし。気温も低くなく無風の絶好のコンディションだ。いつもより随分のんびりと山頂を楽しんだような気がする。久々にセルフ撮りに興ずるも、枝にカメラが上手く固定出来なかったりモデルのポージングが駄目だったりでやっとお見せできるのがこの一枚。全身真っ黒クロスケで里山だったら撃たれちゃうかもしれないね(笑)
 ちなみに数年前の赤薙山のセルフ撮りでは変な色の組み合わせのスパッツが奇抜だったが、今回はmontbelのアウターズボンの中にすっぽりスパッツが隠れている(インナースパッツ)ので見た目はスッキリだ。

ランチタイムとする
全身真っ黒でクマだね
今日の相棒は絶好調

 下山は我がトレースを丁寧に辿る。急斜面区間の下りは流石のライトニングアッセントも弱いようで難儀する。こういう場所はワカンのほうが経験的に手堅く通過出来るものなのだが、残念な事に今日は車の中に残いてきてしまった。

 牧柵のあたりまで下ってくると桝形山方面がはっきりと見える。桝形山のシルエットも学校平からアプローチする限り窺うことは出来ないが、こちらから見ると成る程桝をひっくり返した形なのだなぁと納得。
 桝形山から見る冬の前黒山は、スッカン沢を挟んだ向かい側に轟々と風を唸らせて毅立していた憧れの山であった。今日はまさに自分がそこに立ってきたと思うと感慨深いものがある。
 (実際に桝形山から見えるのは手前の1700mPである可能性が強い。前黒山は奥にあり標高が幾らか低いので桝形山からは見えない可能性が高い)

下山途中で見た日留賀岳と鹿又岳
急斜面は尻もちをつきながら
桝形山の名前の由来が解る

 牧柵から離れ際に見えた北側に累々と伸びる男鹿山塊。せめて黒滝山まではと想いを馳せるが、大金星の大佐飛山方面は封印された如く遠く彼方に光り輝いていた。

男鹿山塊が美しい
日陰は圧雪路

 

概略コースタイム

駐車地発(07:40)-林道入口(07:46)-林道離脱(08:09)-牧柵接合(08:42)-牧柵離脱(09:03)-
山頂北尾根末端(10:04)-山頂(11:24)-昼食休憩-行動再開(12:25)-北側好眺望地点(12:57)-
山頂北尾根末端(13:24)-牧柵へ接合(13:56)-牧柵から離脱(14:14)-林道帰着(14:29)-駐車地着(14:53)

カテゴリー: 那須塩原の山   パーマリンク

リベンジの前黒山 への10件のコメント

  1. Non より:

     こんばんは。前日に速報を拝見していたので、「おお~、前黒山~」
    と思っていました。新兵器と共に、深雪の山を楽しまれたようですね。
    山頂からの風景も、すごく新鮮。全く知らない山域を見ているようです(^^)
     去年、刈込湖へ向かう時に同様の登山用スノーシューで歩かれた方を登りで
    通りすがりに見ました。たしかに踵の浮き上がりで、スノーシュー自体の重みを
    感じづらくなるのかもしれませんね。
     あと、「桝形山から見えるのは手前の1700mPである可能性が強い」、なるほどです。

    • まっちゃん より:

      高原山を北側の間近から眺めるのは新鮮ですね。
      今回、雪のコンディションは最高でした。フカフカ過ぎず締り過ぎず。
      スノーシューの威力で思いの外登りに体力を使わなかったのも効いてます。
      スノーシューについては次の記事で詳しく書こうと思っています。

  2. リンゴ より:

    昨年初めてマイスノーシューを購入する際にMSRにしようか迷ったのですが、それほど難しいフィールドを歩くわけでは無いということで普通のやつにしてしまいました。
    2シーズン目で早くも後悔、どうせ長く使うならば絶対MSRですよね。
    いよいよ残雪期の大佐飛山挑戦も近いのでしょうか。

    • まっちゃん より:

      自分も同じでした。
      本格的な雪山に行く訳ではないから・・・との考えで選択しましたが、平坦な所をのんびり歩くだけでは無く、自分のように多少なりとも昇降がある所を歩くならやはり登山用のものを選ぶべきだと今回の経験で確信しました。

      >残雪期の大佐飛山

      これはまだ自分の体力と経験でははっきり言って無理です。今行くとすれば、遅い自分を気長に待ってくれる経験豊富なパートナーを探して一緒に行ってもらうしか方法無さそうです。
      将来的にも実現に向けて色々な可能性は模索し続けたいですね。

  3. ケン坊 より:

    こんばんは。
    やはり”まっちゃん”は聞きしに勝る冒険家ですね~>笑<
    雪山だから登れる山があるとは聞いてましたが、前黒山や大佐飛山などがそうなんですかね。
    ケン坊は、申し訳ありませんが初めから”栃木百名山”には含めてません>苦<
    今回も一人なんですよね? 
    普通の人には信じられない行動ですよ。もちろん奥さん公認なんですよね~
    わが家だったら”即離婚”騒動になっちゃいますよ...奥さん心配じゃないのかな~

    • まっちゃん より:

      いやいや、決して冒険家ではありません。

      人一倍臆病で石橋を叩いても容易に渡らない性格ですよ。
      実際の行動に至るまでは、様々な情報収集と想定しうる危機状況を考えて予定を組みます。
      入山すれば(特に今回のようなノートーレース雪山は)、GPS、読図、経験と周囲の観察の全てをフル動員して地形を読み、大袈裟かもしれませんが研ぎ澄まされた精神状態で行動します。
      勿論、怪我をすればそれも致命傷になりますので、足の出し方や岩角を掴む指の一本まで気は抜けません。
      逆に自分の場合は道標が多くて人が歩いている山の方が気が抜けていて危ないです。また、自分がよく見るブログの中には遥かに高いレベルの山行をする方が多いですが、皆さんやすやすと難路を歩かれているように見えますが、実はかなり慎重かつ緻密に行動している筈です。

      安全に下山して初めて遊びになる訳ですから、その為には二重三重にリスク管理をするわけですね。家内には、当日行動するルートの地図を必ず提出します。万が一帰宅しなくても一晩は捜索依頼を出さずに待ち、翌日に警察に地図を提出して欲しいと言ってあります。
      また、実際の山中の行動は予定したルートから外れても50m以内に留めるようにしています。置いてきた地図が命綱ですからね。
      リスク管理のうちのどれか一つが破綻しかけた時は行動を続行する能力に欠けてしまったということになりますので、残った能力で下山するという事になります。従って、よほど整備されていて人が多い山以外は、下山してもまだ体力に余裕があるような歩き方しかしないようにしています。

      とまぁ、いろいろやってはいるのですが、やはり想定外の出来事やうっかりした事故も無いとは言えません。
      最終手段としてセルフレスキューの怪我治療、二晩は過ごせる水と食料とツェルト。これらがザックを重くしているのは確かですが、外せない装備です。

      そこまでして山に登るか?という問いに対してやはりYesと答えてしまいます。
      バイクに乗るのもそうですが、常にリスク管理が要求されるものは見返りとして高いレベルの感動があると自分は思っています。

      山に対する考え方は人それぞれ。
      ローリスクで楽しむ山も、自分のように臆病ながらもチャレンジする登山と、本当に冒険家のようなハイリスクで先鋭的なスタイルの登山をする人。

      また、単独行か否かというのもよく議論になります。自分はどちらでも良いとは思いますが、自然と向き合える、自分自身と向き合えるのは単独でしか味わえないと思います。2人以上の登山は自分以外の人間が加わった瞬間にコミュニティーとしての行動となり単独とは確実に違った方角のバイアスがかかることになります。ただ、どちらでも楽しめればそれはそれでOKではないでしょうか。

      グループじゃないと登れない人。たまに見かけますし、それ自体否定する気は毛頭ありませんが、自然を相手にしてリスクがゼロでなければ自分で対応する力を付けて入山して欲しいし、単独でしか味わえない山の世界も知って欲しいと思います。

  4. NYAA より:

    >何故今まで買わなかったのか?

    ふむふむ、前のがよほど、ひどかったようですね。でも、この程度の斜面では、EVOでも大して変わりないと思います。ライトニングアッセントの本領発揮は25度以上の斜面で顕著になると思います。

    下りですが、25インチでは、結構つらいのかも。やはり、斜めに降りて、エッジを使うようにするしかないと思うのですが。

    >自分自身と向き合えるのは単独でしか味わえない

    これは、まったくその通りで、結局、脳の仕組みがそうなっているんです。自然に逆らえないのと同様に、「人間は、脳の仕組みに逆らえない。」のです。こういった大前提に基づいた判断ができない人は、判断ミスを起こすんです。

    • まっちゃん より:

      NYAAさんとさとうさんの前黒山北尾根を見て触発されて登ってきました。
      植林帯が多いのがちょっと玉にキズですが、この山は元来周囲ぐるりと植林で覆われているので仕方が無いところですが、途中の自然林には癒やされました。

      ライトニングアッセントは下りではやはり22インチのほうが楽なのでしょうが、もう少し深雪になると浮力は犠牲にしたくないので自分は25インチで良かったと思います。
      いろいろと情報提供ありがとうございました。

  5. 亀三郎 より:

    おはようございます^^

    ここは、ロケーションとしては新湯富士のお隣さんなんですね
    しかし、、、新湯富士とは、難度がめちゃくちゃ違う!
    亀家には、一生行けない山と思うので
    貴重な山レポです~~~(感謝)
    それにしても
    山の景色 いい写りですね
    まっちゃんのカメラのセンス、いつも羨ましく思っています。
    コンデジなんですよね
    ううう、、、さすがです
    あと
    山って、冠雪してると神々しく見えますよね
    わたし、いつも、、、、そう思うのです。

    PS 真っ黒くろすけ、、、個人的に、、、受けました!!

    • まっちゃん より:

      綺麗な雪景色や山の風景を眺めていると、大袈裟ですが命の洗濯をしているようです。

      カメラのセンスはお恥ずかしい限りです。
      コンデジは発色とかコントラストがどうしても弱いので掲載写真は全てPhotoShopElementで修正しています。表面上の見た目はまぁまぁかなと自分でも思うのですが、やはり限界もあるので良いカメラが欲しいです。
      でも重さと大きさはやはり引き換えに出来ないし・・・悩ましいです。

      雪山にはいつも黄色いダウン(赤薙山で着ていたやつ)を持っていくのですが、大抵途中で暑くて脱いでしまって今回も途中から薄手の黒ダウンで歩いていました。

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