四郎岳登頂、そして再訪の燕巣山はキツかった

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

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  2012年9月22日 燕巣山から湯沢峠

 金精峠を越えると丸沼付近でいつも気になっている2つの山がある。形よく双耳峰(実際には距離が離れているので双耳峰とは言わないが)のように聳えるそのひとつは群馬百名山の「四郎岳」。そして栃木寄りには栃木百名山の「燕巣山」が四郎峠を挟んで対峙している。 前回、燕巣山を訪れた時は県境尾根を湯沢峠へ降りるというレベルの高いチャレンジで四郎岳に出番は無かったが、心の底にはいつの日かという思いが燻っておりようやく実現の日が来たのである。

 朝早く家を出ても夏の朝日が訪れるのは早い。夜明け直後に周囲を覆っている低層のガスも刻々と霧散し、一日のはじめにふさわしいようなまばゆい日差しが降り注ぐ。そんな中、金精道路を通過すればいつも撮っている筈なのについ車を止めて金精山をシャッターに収めてしまうものだ。

 丸沼温泉駐車場に着くと、まばらに駐車している車は温泉の泊まり客と釣り人なのだろう。山支度の車は無さそうである。
 準備を済ませて駐車場最奥地より歩き出す。道標を真っ直ぐ進めば、前回帰路に通った湯沢峠へと続く。思えば、湯沢峠から奥鬼怒へ抜けるルートというのも一興だろう。どうせなら、燕巣山から再び県境尾根降りを果たし、奥鬼怒温泉で汗を流すなんてのいうのは至高の楽しみではないだろうか。実現がいつの日になるかはわからないが、考えただけでも楽しみな山行になるに違いない。

 道標を左に折れ、と言っても左側は草で覆われていて進めない。少し手前の河原が登山口なのだ。基本的には前回の燕巣山の登山ルートなので迷う事はない。正面に聳える四郎岳を眺めながら気合を入れて出発。

ここを通るといつも撮影してしまう金精山
丸沼温泉駐車場より
目指す四郎岳

 初めの渡渉のあとの平坦地は相変わらずの草ぼうぼう。草の中に踏み跡がはっきりしているから困らないが、朝露をたっぷりと含んだこの区間は不慣れな人ならちょっとためらうはず。もともと登山者が少ないせいもあって、四郎峠までの沢沿いのこのルートは去年歩いた時よりも更に荒廃しているような気がする。

初めはちょっと薮
渡渉を幾度と無く繰り返す
歩く人が少ないのか登山道は荒廃

 高度を上げていくと綺麗なナメ沢へ差し掛かる。沢に赤い葉が落ちていた。まさか気の早い紅葉ではないだろうが、一葉の紅い葉が静かな渓谷に美しかった。

既に紅葉?
ナメ沢が美しい

 前回迷った沢の分岐にはピンクリボンが付けられていた。このルートには忘れた頃に手製の金属プレートの道標が2つ3つ散見されるが、基本的には沢沿いを幾度と無く渡渉を繰り返して進んでいく。大きな分岐は下写真(中)の一箇所だけだから、ここを注意すれば問題ない。また、ピンクリボンを見落とさないように進むが、一箇所だけ明らかに違うルートに付いたリボンを見た。恐らく沢登りの人が付けたものだろう。盲信は禁物だ。

 問題の分岐から程なく崩落地脇を通過。前回は無残に裸の崖地だったが、随分と青々と草が生えてきている。こうやって裸地もまた時とともに蘇っていくのだろう。

沢の分岐
崩落地も前回に比べて青々と

 沢から離れて足元の悪い急登をやりすごし、息があがり始めると上が明るくなる。最後は這い上がるようにして四郎峠に到着。峠に立つと北側から吹き上げる冷たい風に生き返る心地。ザックを下ろし、汗を拭ってしばし立ち止まる。

 沢沿いの荒廃したルートが嘘のように綺麗な東電の巡視路が、尾根通しで四郎岳と燕巣山を結んでいる。前回は四郎岳方面を一瞥するのみで四郎峠を後にしたが、本日のメインイベント、地形図でも逃げ場のないような急登コースにこれからチャレンジだ。

四郎峠はすぐそこ
四郎岳方面へいざ出発

 山を歩いていると「胸突き八丁」という表現がふさわしい登りは誰でも記憶の中にあると思う。そんな急斜面は一部だけであってそう長い距離ではないから、なんとか頑張って登っているとやがて通過しているものだ。
 また、地形図で直登に近い登りも大抵は登りやすいようにジグザグが切られていたりするものだが、四郎岳も燕巣山もほぼ直線的な登り一辺倒だ。とりわけ四郎岳は愚直に直登の連続。少し傾斜が緩んだかと立ち止まれば更に上には先ほど見たような急登光景がデジャブの繰り返しのように襲ってくる。

 無理せず幾度も立ち止まりながら進むと後ろには燕巣山の勇姿が見えてくる。脇からは白根山が遠くより見守ってくれる。そんな両雄に力を貰いながら、なんとか山頂へ到着した。地形図で解っていたし、何よりも四郎峠からせり上がるようなこの斜面を登って見たいと思っていたから達成感もひとしおだ。

 山頂から南西に伸びる尾根道は随分としっかりしている。群馬側から延々とこの緩やかな尾根道を辿ってくるのも良いだろう。何処が登山口となるか、またこの穏やかな尾根道がどこまで通じているかは一切不明だが。

唯一陽が射す笹の道
振り返ると燕巣山と県境尾根がどっしりと
白根山

 

写真じゃ伝わらないがひたすら急登
南西の尾根へ続く道

 樹に覆われた山頂は南側に一箇所だけ眺望が拡がる。眼下の丸沼と大尻沼。向こうには白根山から錫ヶ岳への稜線が続く。

 急斜面で足元に気を付けながらの下りだが、登路で余裕が無かったぶんを取り返すように景色を楽しみながら進む。
 特徴的なシルエットの金精山。そこから続く温泉ヶ岳。少し手前に尾根が湾曲すると次は根名草山だ。更にその手前には燕巣山から湯沢峠へと降下する県境尾根が横たわっている。

眼下の丸沼と大尻沼遠く錫ヶ岳
県境の山並み
これまた写真じゃ伝わらない急坂

 無事四郎峠へ降りると沢山のグループ登山の一行が丁度休憩中であった。本日初めて逢うハイカーだが、いきなりの大所帯で20人位はいただろうか。中のひとりに「四郎岳をやってこれから燕巣山ですか」と聞かれ、そうですと答えると、イヤイヤご苦労さまという声がグループから漏れ聞こえた。確かに自分自身でも、かなり四郎岳には搾り取られた感があり、そんな疲れの色を読み取られたのだろうか。

 集団の隅の方に明らかに浮いた感じの恐らく60代半ば位と思われる女性がおり、その傍らに自分もザックを置いて水を取り出した。
 女性の話を聞くと、単独で沢沿いを進んで行ったが、あまりにも不明瞭であり自信が持てなかったので引き返そうとしたら団体さんがやってきたのでここまで付いて来たのだという。
 これからピストンですか、それとも湯沢峠へ降りるのですか?と尋ねられたが、昨年自分が歩いた時の状況を説明し、とても勧められませんとはっきり申し上げた。沢を詰めて四郎峠へ到達するのが困難であれば県境尾根は無謀としかいいようがない。

 この女性、単独でこんな寂れた山に来るだけあって賑やかなのはあまり好まないらしい。四郎峠まで付いてきたものの、この先が案じられる所へ同じ単独の自分が通りかかったので渡りに舟とでも感じたのか。団体さんより一足お先に自分が燕巣山へ向けてスタートし、その後をこの女性が追うといった形になった。

 1891mP先のコルあたりまでは比較的穏やかな登り。四郎岳の疲れはあるものの、まだこの区間は余裕で進むことが出来た。幾らか高度が上がってくると背後に四郎岳が樹間から姿を現す。向こう側から燕巣山を眺めたのに比べるといささかものたりないが、前回濃いガスの中で見た時は僅かに輪郭が識別出来た程度であったからまだましだ。

四郎峠先から樹間に覗く燕巣山
初めは穏やかな道だが
四郎岳の姿はすっきりと得られない

 コルを過ぎると燕巣山への登りもいよいよ佳境へと差し掛かる。四郎岳の疲労も遂に効き始めてもはや牛歩の如く。前回この区間は急だなと感じても、足が出ない程ではなかったが今回はどうだ。

 例の女性と抜きつ抜かれつ。追い抜きざまに「団体さんが追いついてきてますよ」と言われた。確かに声高な話し声が先ほどから背後に迫ってきている。狭い山頂を団体さんに占領される前に、静かな山頂を踏みたいという気持ちは自分も彼女も同じようだ。
 だが足が上がらない。息が上がる。このままブルドーザーのように元気なグループに圧延されるがごとく追い抜かれて、静寂の山頂を逃すのだけは何とか避けたいところ。

 微速前進の修行のような登りであったが、どうにか山頂一番のり。後続の単独女性も続く形となりめでたしめでたし。ちょっと意地っ張りな登りとなったが、結果的には皆さんのご想像通り。いつにも増して疲れた足をかばうように下山することとなったのである。

 前回はガスで覆われた山頂で何も見えなかったが、今回もやや曇り気味であまり景色は良くない。四郎岳とほぼ同じような南側の眺望はこれでヨシとして、少し先の笹原に出て東側を窺う(下写真中)。この先の谷間に先週楽しんだ奥鬼怒温泉があると思うと感慨深い。また、県境尾根を北に伝い物見山へ抜ける憧れのルートを歩く日は来るのか。ロマン溢れる光景だ。

 前回はガスの中、GPS頼りの県境尾根下りであったが、眼下に伸びる尾根が今日は綺麗に目視出来る。尾根への取り付き口は山頂から直線で行くには少し濃い薮を漕がなければならないが、今回は見えているのですぐそこと判った。懐かしい気持ちで降りて見るとそこにははっきりと黄色いテープが太い木に巻かれており、県境尾根歩きを試みた人の羅針盤になっているような気がした。

ヘロヘロでようやく燕巣山へ
山頂からちょっと薮に出た地点
前回降下の県境尾根

 

丸沼に帰還
四郎岳(左)と燕巣山(右)
菅沼売店のすいとんが美味しい

 

概略コースタイム

駐車場発(06:52)-四郎峠(08:21)-四郎岳(09:33)-四郎峠(10:12)-1891mP(10:26)-
燕巣山(11:40)-昼食休憩-行動再開(12:05)-1891mP(12:53)-四郎峠(13:00)-駐車地着(14:07)

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四郎岳登頂、そして再訪の燕巣山はキツかった への8件のコメント

  1. 亀三郎 より:

    こんにちは
    四郎峠までの沢、最近人気のキャニオニングが出来そうな感じですね
    川底の石が、ツルツルしてて滑ると気持ちが良さそう、、、
    って、言っては見たももの・・・
    このルートの景色を見ると、藪が多いし、、、
    いつ、、なんどき、、ベア君が出て来るか?ちょっと緊張感を感じます(ブルッ)
    キャニオニングなんて、言ってる場合じゃない??
    それにしても
    大変なルートですね。私なら、、、四郎岳どころか、、、四郎峠までの往路で
    「遭難」しちゃうかもって、読みながら思いました。
    でもでも、団体さんは来るし、
    単独で高齢の女性の方も来るし、
    まったく人気がない訳でもないんですねぇ。
    あ、単独の女性の方とは、燕巣山山頂でお別れしたのでしょうか?
    まっちゃんが、先に下山開始で??
    私なら
    「良かったら、一緒に下りましょうか?」って
    お誘いしちゃうかも、、、、 ← これは、半分冗談です、、、ん、、、??(笑)

    • まっちゃん より:

      ベア君は四郎峠から四郎岳方面で目撃されているので、今回は居る前提で三連熊鈴に大音量熊鈴追加、そしてホイッスル携帯、腰にはエアーサロンパス(笑)で臨みました。(春の持丸山と同装備)
      山域には自分が一番乗り。沢沿いはお互いに気配が消えるので視界が悪い所は必ずホイッスルを吹いてあたりの草をストックで叩いてから進みました。
      四郎岳から降りてきてから団体さんが声高に話しているのが聞こえた頃からは緊張も解けましたが、これもまた静かな山登りの醍醐味でしょう。

      単独女性は、「(遅いので)一番最後にならないようにお先に」と言い残して一番先に下山。
      お誘いも誘われも皆無でしたよ(爆笑)
      自分は二番手で降り始めましたが、途中で女性を追い抜いて車の所で着替えが終わった頃女性は降りてきました。すっかり服装が変わった自分が挨拶をしても「誰あなた?」みたいな反応で、随分影薄っ>自分でした(^_^)

      団体さんについては次のNonさんのコメントに少し書きます。

  2. Non より:

     こんばんは。単独の女性に20名ほどの団体さんと、驚きに溢れた山ですね。
    大パーティは群馬側の百名山制覇でしょうか。
     あと、地形図で改めて確認しましたが、たしかに等高線の詰まり具合が
    厳しいですね~ 私は直線的な急登というと、西平岳・釈迦ヶ岳周回を
    思い出すのですが、そちらの等高線が緩やかに見えてきました(苦笑)
    それを団体さんに追いつかれないペースで、とは… お疲れ様でした(^^;)

    • まっちゃん より:

      この団体さんなんですが、自分が四郎岳から降りてきた時に丁度四郎峠で後続の何人かを待っている状態だったようです。
      その後、四郎岳グループと燕巣山グループと、四郎峠でリタイヤ組の三班に別れた模様。

      自分が燕巣山から下山して四郎峠についた時はリタイヤ組が雑談中。そこで自分も休憩していると四郎岳組が丁度下山してくるところでした。
      メンバーを見るとかなり高齢の方も多く、四郎沢沿いの足場の悪い所をよく登ってきたなと思わざるを得ませんでした。会話を小耳に挟むと、燕巣山へ登ったグループがどうやら先鋭部隊のようで、なるほど、あの追い上げの速度はやはりな、と頷けました(笑)

      グループ全体が四郎峠へ集結する前に、先行して弱い人を連れて降りるという話をしていましたが、グループの総リーダーはちょっと計画が無謀というか、選抜メンバーで登るべき山だったのではと感じました。
      特別に危険箇所とされるところはありませんが、経験の浅い人が単独で歩いたり、何度も繰り返す渡渉で足を滑らせたりするとまずいのではと思いました。

      単独女性は、単に静かな山好きさんのようでした。
      団体さんの先鋭グループ達のようなパワフルさはありませんでしたが、ペースは遅くとも確実に登っていくその後姿にはそれなりのキャリアを感じました。

      負け惜しみですが、四郎岳をやらなければ自分だってもう少し一定ペースで燕巣山を登れたのですが、今回はマジで牛歩でした(^^;

      単独女性も、「頼もしい先行者」と一瞬思ったのかもしれませんが、それもすぐに化けの皮が剥がれてただのヘロヘロオヤジじゃんこいつは、という事になったのでしょう。

  3. リンゴ より:

    う~ん、確かにこれは登頂意欲を掻き立てられる等高線の詰まり具合・・・て言うか、ペース配分を誤るととんでもない事になりそうですね。
    それはそうと金精峠から温泉ヶ岳~根名草山に至る山並み、自分が歩いたばかりなので感慨深く写真を拝見しました。
    私はその稜線から四郎岳、燕巣山を見ていたのかな?

    • まっちゃん より:

      今回は急登+団体さんのダブルヘッダーにヤラれたようです。
      お陰で久々に翌朝(月曜の朝)から筋肉痛が始まって、今現在も痛みが急登のお土産となっています。
      人の多い山に行くといつもペースが乱れるのでちょっと精神修練が足りないな>自分
      と痛感しております(笑)

  4. ケン坊 より:

    こんばんは。
    ココは想像以上に厳しいですね~
    実は、栃木百名山の燕巣山は駐車場からのピストンなら
    ケン坊も登れるのではと”ガイド”を読んで思い、残り少ない
    対象の山の一つに入れておいたんですが...
    四郎峠までも、まっちゃんの情報を見る限り断念せざるを
    得なそうです!
    しかし、毎度のことながらまっちゃんの登られる山って
    ケン坊には高値の山、高値のコース  しかも単独行!
    何方かが入山するのを登山口で待ってて、ご一緒させて
    もらうしかないかも...>笑<
    素晴しい登山に読み入ってしまいました。

    • まっちゃん より:

      四郎峠まで到達すれば後は良く歩かれた登山道なのでまったく問題ありません。
      ただ、やはり四郎沢沿いはちょっと慣れた方でないと、というのが正直なところです。
      序盤の草薮は落ち着いて道形を探し、渡渉は対岸のリボンや微かな踏跡を追う事になります。
      ケン坊さんなら大丈夫だと思いますよ。駄目な時は沢沿いに戻れば必ず帰れますが、無理は禁物のエリアだと思います。

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